▼2019/11/05 火曜日
朝の彫刻清掃中、携帯が鳴っているようだと思いながらも確認できずにいた。合間に見ると昨日会った友人Yちゃんのご主人の訃報だった。
ショックだった。
まだ二人が結婚する前に私の実家に泊まりに来たことがあった。スキーをしに。ストーンズ派だしナイーブで激しい方だと思った。
その後二人は家庭を持ち、カメムシ会の仲間として家族ぐるみでの長いお付き合い。子育て時代はダンナ達も子守要員として年に一度は顔を合わせた。子たちが手を離れるにつれ、近年はご主人Tさんにはあまり会ってはいなかった。
私が大病を患って退院する時、既に定年退職されており
タクシーで帰ろうと思っていたのに「夫が『車を出す』と言っている」と言う。「イヤイすヤイヤ、それは悪いから」と辞退するのに「もうすっかり送る気満々らしいよ」というのでそうかい…それじゃ甘えるかな。とは言ったものの何年ぶりの顔合わせ。間が持つのかいな、と思った。けれど、会ってみるとなんのことはなかった。
道みち、Tさんは身体が弱く高校時代病院通いをしていたことなどの話になる。そこから魂が現実からはみ出しがちになったのだろうと察せられた。
名門校を卒業した後、東京の有名な劇団に所属し活動した二十代に至る道程を何となく示唆する話。
Uターンし職場で出会い友人と結婚してからの、それから数十年。福祉関係の仕事を全うされ定年退職。第二の仕事も引退されてエアポケットの時代。手探りしつつ、自宅で趣味のギター弾きをしている今に満足されているのだな。と感じた。
若き日の激しいものを抱えた雰囲気から、とても穏やかな“白秋”を過ごされているのだと。
日曜日は『ゴールデンカムイ』を私に返すこときっかけのランチだった。ダンナさんの方が熱心に図書館で続きを探し読んだようだ。
そう言えば何年か前YちゃんがTさんが伊能忠敬にハマってると言っていたな、と思い出して(きっと角幡唯介の『極夜行』が合うのではないかな)と差し上げることにしてYちゃんに渡した。
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GPSに頼らず星を観測して自分の座標を知り極地を歩く冒険は、日本地図を作った手法にかなり近い。直ぐには読まなくても、いつか気が向いた時、読んでくださればナンカ響いてくれるんではないかな…と、善き時限爆弾を仕掛けるような気分で私はいた。
多分その音が奏でられることはなかった。
けどきっと宇宙のどこかにある。本って永遠に死なないミジンコみたいなものだから。
ギターを抱えたTさんの遺影はとてもよい笑顔だった。