昭和三十三年生まれの私は、路地といえば西岸良平を思い出す。『三丁目の夕日』の世界。懐古趣味と言われようとも、こども時代は記憶の底に染みついているものだ。
駄菓子屋さんがあり、道にはオート三輪も走っていた。ついでに北海道では、まだ時折、馬車を見かけたものだ。馬具屋、蹄鉄屋さんもあった。
そして、路地にはこどもがいた。
けんけんぱ。ゴム跳び。フラフープ。
まりつき。陣取り。かくれんぼ。
ぽこぺん、ぽこぺん、だれつっついた?
握りしめた今日の小遣いは、十円玉ひとつ。江戸揚げを買おうか、くじをひこうか。
それとも機械のてっぺんから噴水のように吹き出している、あのオレンジュースにしてみようか。
悩みに悩んで使っていた。
下手をすると、知能犯の姉に
「マーガレット買ってきたよ。読み賃残りは明日でもいいよ」
と、そそのかされる。マンガは当時六十円。姉は貯めて大きく使う。しかも、妹二人から読み代として二十円ずつ巻き上げるのだ。一番先に読んで、負担は同じ二十円。(もっと頭使え!あの頃の自分。と思うがもう遅い。)
なんにしても、日がな一日遊び呆けていた。
退屈なんてしたこともなかった気がする。