その日、私は夜の病院で呻いていた。
せっかく、あんなに痛い思いをしたのに。ジタバタせずに、我慢強く乗り越えたのに。おお、神よ。あなたは本当にいるのですか?
と恨み言の百万遍。
出産という一大事を乗り越えてなお、あのような痛みが待ち受けているとは・・・想像だにしていませんでした。
日頃貧相な胸が、巨大化し、ガチガチになっています。この“張り”は、生理前のちょっとした“張り”とは比べモノになりません。
冷やすものを借りたけれど痛みがどうにもならない。看護婦さんに泣きつきました。
どれどれ・・・と軽く触れられても痛い。
「しょうがないねぇ。横になって」と言われマッサージしてもらう。
「うぐぐぐ・・・」
「ごめんね」
「ううう・・・」
「ホントにごめんね」
何してんの?あなたたちは。ふしだらよ。という場面のよう。
だって痛いの痛くないのって滅法痛い。AV女優よろしくシーツを噛んでこらえたかった。・・・こらえるものが違うけれど。
死ぬ思いでこらえた甲斐があり、岩のようだったおっぱいが少し柔らかく楽になった。それまで般若だった看護婦さんの顔は、魔法を解かれたように天使になった。
新生児の吸い方では、足りなかったけれど、それでも張った胸を吸われるのは気持ちいい。あの気持ち良さではなく。
授乳は、はち切れんばかりに胸に抱えた何かが、収まるべきところに収まる行為で、とても充実感があります。
どうしていいのかわからなくって、でも痛くてたまらない心のもやもやも、こんな風に誰かの栄養になって ジューッと力強く吸って貰えるといいのにね。
さっぱりするよ。