■ 日 日 夜 夜 ■

日々のタワゴト                  

<はる【張る】>その弐



 その日、私は夜の病院で呻いていた。

 せっかく、あんなに痛い思いをしたのに。ジタバタせずに、我慢強く乗り越えたのに。おお、神よ。あなたは本当にいるのですか?

 と恨み言の百万遍

 出産という一大事を乗り越えてなお、あのような痛みが待ち受けているとは・・・想像だにしていませんでした。

日頃貧相な胸が、巨大化し、ガチガチになっています。この“張り”は、生理前のちょっとした“張り”とは比べモノになりません。

 冷やすものを借りたけれど痛みがどうにもならない。看護婦さんに泣きつきました。

 どれどれ・・・と軽く触れられても痛い。

「しょうがないねぇ。横になって」と言われマッサージしてもらう。

「うぐぐぐ・・・」

「ごめんね」

「ううう・・・」

「ホントにごめんね」

何してんの?あなたたちは。ふしだらよ。という場面のよう。

 だって痛いの痛くないのって滅法痛い。AV女優よろしくシーツを噛んでこらえたかった。・・・こらえるものが違うけれど。

 死ぬ思いでこらえた甲斐があり、岩のようだったおっぱいが少し柔らかく楽になった。それまで般若だった看護婦さんの顔は、魔法を解かれたように天使になった。

 新生児の吸い方では、足りなかったけれど、それでも張った胸を吸われるのは気持ちいい。あの気持ち良さではなく。

 授乳は、はち切れんばかりに胸に抱えた何かが、収まるべきところに収まる行為で、とても充実感があります。

 どうしていいのかわからなくって、でも痛くてたまらない心のもやもやも、こんな風に誰かの栄養になって ジューッと力強く吸って貰えるといいのにね。

 さっぱりするよ。