▼5/22 後編
帰宅。丸一日ゲーム三昧の夫に「良ければ送ってもらえますか?」とお願いして待ち合わせ場所へ到着。はたと、どうやってM那智を見分ければ良いのか、心眼で見ればいいのか、それとも手かざしか、髪に妖気アンテナよ立てと念じるのか…。不安になりながら一応Mヘヅにメールで伺いを立てる。「どんな人かわかる?」「知らん」
見ればベンチに人待ち顔の女性がいらっしゃる。一見若いが40代半ばにも見えてくる。真っ赤なチェックのコート足元はくるぶし丈の黄色い星がたくさんついたヤツ。メークは縁取り派。この人M那智かもな。もしも、この人がM那智だったらどうしよう。悪いけど絶対に話合わないと思う。ああコマッタ困った。
そう思ったころに分刻みスケジュールのMヘヅさんも、瞬間移動で桜の木の下から蘇ってやってきた。
「なんか目印とか特徴とか聞いたの」
「知らん。薔薇の花とか持てばいかったべか」
と話していた矢先に殺気を感じる。ガラスドアの向こうには「ハッシ」と音がするくらいのガン見の女性がいた。
◎猫まっしぐら/よりまっしぐら/M那智降臨
迷わず騒がず彼女は眼力で我らを捕捉。そのまま未確認歩行物体に吸い込まれるがごとくAブリヤへ。まあま、みんなして飲むこと呑むこと。ちなみに、その時刻まで素面だったのは私ひとり。昼酒二人に昼博打ひとり。一番マニンゲンは誰なのか。
刺身盛り合わせ/鮭ハラス/イカゴロるいべ/麦酒三つ/白魚と若布のなんとか/じゃがバター/ビール三つ/グリーンアスパラのなんとか//麦酒ひとつにグレープフルーツサワ-二つ/八角刺身/カマンベールいももち/ジントニック/麦酒/梅酒/物体X/ジントニック/麦酒/さわー/ビール/さわー/ジントニック/お茶三つ・・・・。
という具合に調子よく食べ呑み語ったのであった。何の拍子かMギちゃんと私の間でよく不思議がっている、彼女の七不思議のうちの一つ「聞いてください。この人は、生まれ落ちてこの方、幾十年!一度も死にたいと思ったことがないというのですよ」というエピソードをM那智さんに披露。
それがナニユエかという根源的な疑問は、彼女によって的確に説かれたことがない。答えが返るなどとは期待していなかった。が、一瞬の間があり、MヘヅことK巫女さんは座った目で答えました。
「信じてるんでしょうね」
「????」
「それは自分を信じてるのでないのです。では何を信じているのかと言えば、それは世界を!なのです。私は世界を信じているのです」
「・・・・・・」
我々はこの世のものならざる存在を目にした。その神々しさに目はつぶれ、口はアングリ、よだれボトボト。
更に彼女は、こうも言った。
「世界は美しいのです」
真面目な話、私にはすべてが腑に落ちたし得難い機会にMナチは札幌にやってきたのだと思ったのだった。
私は頭を冷やしながら我が家まで二里ちょいとの道をテクテクと歩いて帰った。千鳥足のおじいさん以外は全然怖くなかった。