(オモヒヅの連用形から)
前にあった事柄で深く心に残っていることが思い出されること。
また、その事柄。また、そのきっかけとなるもの。
源氏物語総角「空しくなりなん後の―にも」。「初恋の―」「―の品」
* * * * *
『小説ワンダフルライフ』(ハヤカワ文庫)という本があります。是枝裕和の作品で、同名の映画「ワンダフルライフ」を基としたものです。裏表紙にはこうあります。
人は亡くなると、天国の入り口でこう言われます。「あなたの
人生の中から大切な思い出をひとつだけ選んで下さい」天国へ
行くまでの7日間で、死者たちは人生最良の思い出を選択する
ように迫られ、それを職員が再現して映画に撮影し、最終日に
は上映会が開かれるのである。そこで死者たちは改めて自分の
一生を振り返る。(後略))
何人かの人物が、自らの思い出を選んでいきます。戦争で生き別れになっていた恋人と橋の上で再会した瞬間。出産の瞬間。大震災を逃れ竹薮で食べた麦入りの塩むすび。ディズニーランド。生後五・六ヶ月のある日、ふとんがひんやりしてものすごい陽を浴びた幹事が幸せだったという29歳の青年。
そして、どうしても思い出を選べないという老人もいました。
一人一人の回想がとても真に迫っていて、それは全てばらばらの別々の人生なのだけれど、それらが一つになって、なんというか人間が皆いとおしくなるようなそんな映画でした。
私も、この本を読んだり映画を見た人なら皆思うように、(自分なら・・・?)と考えました。40年以上も生きていると、膨大な一瞬の積み重ねで生きてきたわけで、なかなか「これこそが!」という瞬間は決められません。しかし、どれか・・・と考えようとするとたくさん楽しいことがあったんだなぁとは思い至ります。