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日々のタワゴト                  

2010の本

一日の中に対価を伴う「労働」が組み込まれた生活が始まり、やや健全な一月が終わろうとしている。働けば、その心地よさを実感するのに、やっっぱり休みたいと思ってしまうし、それが期限付きであることに安堵を覚える。所詮、体質に合わないのか。でも、小休止したら肉体労働を探すつもり。

2010年も、あと五日か。テレビも新聞も「総決算」的なものが目白押し。私も、ほぼ毎年、自分の読書生活を締めくくってみたりしているが
今年は今ひとつ充実していなかったかも。もとより世間のベストセラーには、あまり縁がない。

とりあえずドキュメント部門は『ヤノマミ』:文明とは何ぞや?という古くて新しい問いかけに海老様並に胸ぐらを掴まれ殴られ、魂を揺さぶられた。食べること、命を産み繋ぐこと、生活すること、死ぬこと、それらがダイレクトに自分の行為にゆだねられている当たり前で本来的な「人間」の凄まじさにショックを感じた。

そして行き当たりばったりの旅の途中で読んだ『日本人の魂の原郷 沖縄久高島 (集英社新書)』これまた素晴らしい記録だった。私の中に欠片もない「信仰」というものに興味を覚えた。現代文明の恩恵を受ける以前の生活は「灯」ひとつとっても自然のもたらすものに左右される。島のだれもいないキャンプ場の漆黒の闇の中で見る満点の星には、一瞬にして自分がキューンとミクロのサイズまで縮んでしまった。文句なく否応なしに自然の大きさに畏怖を覚え、闇を切り開く太陽が有り難く感じられたのだった。ごく自然に、こういう気持ちが「信仰」の発端なのだと感じた。

小説部門は、これはもう『IQ84』にひれ伏すしかない。村上春樹というマジシャンの見せる迷宮のイリュージョンで遊ばせて戴くことをありがたく思おう。book4が待ち遠しい。なんたって「青豆」というネーミングが秀逸だ。映画「ノルウェイの森」は見ていないが、かすかな記憶に寄れば村上氏の描く主人公は、非常に現実(虚構だけど)にフラットに立ち向かう能力を持っているなと、羨ましくもあり、いけ好かなくもあり。けしてカッカしないのだ。たぶん性的なこと以外では血圧も心拍数も、ほぼ一定。