むき。方角。 進むべき路。方針。
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「芥川賞書く人は自分がどこに居るのかわかんない人でさあ、わかんないもんだから書くのね。直木賞の人はさあ、自分の居場所を知っている人でね、わかっていることを書くんだよね」。 『百万回生きたねこ』や『おじさんのカサ』の作者でもある佐野洋子が『がんばりません』(本の雑誌社刊『佐野洋子の単行本』・改題作品:新潮文庫)「本好き女の離婚確率」のセリフ。それは、とある友人の言葉として書かれている。至言だ。
例外を挙げようと思うと結構あるし、途中で変わった作家もいるのですが、でも
「なるほど」と思う。芥川賞=大江健三郎・安部公房・村田喜代子・村上龍・小川洋子・柳美里・ 川上弘美
直木賞=宮部みゆき・浅田次郎・篠田節子・林真理子・渡辺淳一・半村良・阿刀田高・向田邦子などなど。
別の言い方をすると、自分にしか興味のない人は芥川賞で、社会を見つめる人は直木賞なのかも知れない。生き方そのものを見つめようとする人と社会の中の自分を見つめようとする人。
私はいい年をして、進むべき方向がどちらなのか見えない。純文学的(!)に生きている。けさらんぱさらん。同じ判らなくても、座標軸を書いて方向を見極めようとする人もいて、私の羨望のまなざしを浴びたりするのですが、私はというと人差し指を舐めて、風向きを感じたり、目を閉じて動物的感、本能を信じて探っているところです。世間知らずの恥知らずなのです。