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日々のタワゴト                  

<えい‐が【映画】>



長いフィルム上に連続して撮影した多数の静止画像を、映写機で急速に(1秒間15こま以上、普通は24こま)順次投影し、眼の残像現象を利用して動きのある画像として見せるもの。画像の色により白黒・カラー、音声の有無によりトーキー・サイレントなどの区別がある。旧称、活動写真。シネマ。キネマ。

 

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 初めて見た映画は、たぶん母とすぐ上の姉と三人で行ったチャンバラ映画だったと思う。

当時は、私の生まれたK町にもK劇場、中央劇場と二つの映画館があった。

  細かいことはすっかり忘れてしまったのだが、チャンチャンバラバラの場面になると私と姉が拍手をしながら

「いいどもガンバレ♪いいどもガンバレ♪」

と非常にエキサイティングで、傍迷惑な見かたをしたのだけが記憶にある。しかし、当時はまだ、どの人も今のように冷静な見かたではなく、盛り上がる場面では拍手なども沸いていたような、そんな気がする。

  人口が、わずか二万の田舎町に二館もあったのに、怪獣映画や話題の映画かかると、押すな押すなの大盛況。行列もしたし、立ち見もしたことがある。

 

 中央劇場では、ゴジラガメラゴジラキングギドラ、華やかなる招待(ザ・タイガース主演)、赤影などを見た。「赤影」の時は、センセーショナルな跳びだす映画であった。入り口で赤影がしているような仮面に似た形の眼鏡をもらう。その眼鏡は赤と青のセロファンが貼ってある。たしかに少しだけ画像がクッキリとして僅かに跳びだす感じはあった。場面は眼鏡を外してみると、赤や青のぶれたような絵になっていた。ちょっとがっかりした。なんだ、(角度を変えると絵が変わる)「チカチカしたシールとかわんないや」と・・・。後年、ユーミンのレコードジャケットにもそんなのがあった。妙に懐かしかった。

 中学生になった頃には、中央劇場はつぶれ「食いもの館」というスーパーになってしまった。話題の洋画を皆で見に行くのが流りで、K劇場には「緑の館」「小さな恋のメロディ」「ロミオとジュリエット」「エマニエル婦人」などを、級友と連れ立ちきゃーきゃーと見に行った覚えがある。封切りから何ヶ月もたって、やっと上映されるのでフィルムも痛んでいたのか、パチパチと雑音は入るし上映中に切れて待たされることも度々あった。「あ〜あ」というような声はあがったが、それも当たり前になっていて、本気で文句をいうような客はいなかった。

 今では二館ともなくなってしまい、年に何度か福祉センターで上映会が催されるようだ。それでも別に不便なわけでもない。ビデオもあればテレビもある。あの頃のように華やいだ気持ちで何かを待つということは、すっかりなくなってしまったが。