副
少しでも。しばらくでも。ちょっとでも。浮世風呂3「こつちは昼の疲れで―早く寝てへと思つてるに」 (下に打消の語を伴って) 少しも。「―かまわない」
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ちっともが些ともだとは、これっぽっちも、ちっとも知りませんでした。
些の字は些少サショウ・些事サジの些です。訓読みは「いささか」。いささかという言葉も耳にする機械がほとんどありませんね。サザエさんで聞くぐらいのものでしょうか。イササカ先生。おや、イササカ先生は漢字ではどう書くのでしたでしょうか。
つまり、些かはすこし、わずか、の意です。
ちっとも知らない、ちっとも寝ていない、ちっとも勉強しない、ちっとも主婦の自覚がない。このような使い方をされる語は、自己弁護か相手を罵倒する状況で用いられることが多そうだ。
現代語では冷静な文脈では使わないように思う。
大袈裟な表現は、人の心に入り込みやすく忘れ去られやすいものではないだろうか。自分も、ハッタリやこけおどしの好きな方である。人品が卑しいのでしょう。
だからこその反動なのだろうか、ときおり「静かな文章」が無償に恋しくなることがある。泣いたり叫んだり、やたら笑わせたがったり、凄んだりそういうお手軽な自分や文章から逃れて静かな森に身を置きたくなる。
そんな気分の時には、浮き足立つことのない幸田文、出久根達郎、向田邦子などがしっくりくる。つまり、少しだけ自分よりも古い時代を生きた人の文章というのは、それだけで禊になるようなところがある。
教養があれば古典を原文で読んだりするのだろうが。