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日々のタワゴト                  

< ふみ‐きり【踏切】> 広辞苑p.2121



鉄道線路と道路とが交差する場所。「―を渡る」○跳躍競技において、強く足を踏み切ること。また、その場所。「―板」○思いきること。ふんぎり。○相撲で、足を土俵の外に出すこと。踏越し。


 「踏切を強くしないと跳べないよー」

先生が発破をかける。

 思い切り走りバーン!と両足で踏切に体重をぶつける。しかし、両腕は跳び箱の上でつっぱらかっている。遅れてお尻がストンと乗っかる。

 

 最初は七・八人いた跳べない組も、時間が経つにつれ、一人抜け二人抜け、残りは体の弱いけいこちゃんと私だけになった。

 「跳べたら教室へ戻って給食!」と言い残され、広い体育館には二人の足音だけ。

 チャイムが鳴り、心は焦れども身体は思ったように跳んでくれない。情けない。だけど、こんなことで泣くもんか。とは、チビなりの意地。

 とうとう跳べずに、みんなに大分遅れて給食を食べた。あの屈辱感は忘れない。自分で自分が嫌でたまらなくなったできごとだった。

ふるさとの踏切の近く。国鉄官舎のそばで、悲しい光景を見たことがある。中学校の同級生の家で遊んだ後だったと思う。

 街灯もあまりなく薄暗くなった、その道に一台の車が走ってきた。なぜだか何もないところなのに、その車は止まった。

 激しい言い争いの声がする。立ち話をしていた私たちは緊張した。目が離せなくなってしまった。少し離れたところから見守った。やがて、女の人が降り、ドアを乱暴に閉めた。一瞬間を置き、サンダルが窓から投げられた。

 土足禁止の車だったのに、怒りで履かずに飛び出したのだろう。女の人は、ブロロロ・・・と去った車を睨みながらサンダルを履きカタカタと音をたて歩いていった。

 忘れちゃおう。悲しいことには、踏ん切りをつけなくては。踏み切ってドカンと次の世界に跳び出さなくては。