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父と頭と頭を合わせるように逆さに寝ながら一日過ごす。本を読んだり世話をしたり、気がつくと寝ている。
布団の上をネコが歩いて来た、と錯覚し(違った!ココ家ぢゃないし)と気付く。
しだいに、こちらの方が夢とうつつが混在し年寄りめいた気持ちになる。
夕飯は、かろうじて廊下を伝い歩きして 居間で食べた。
ときたま、互いに天井を見たまま、ぽつりぽつり会話。
昼ご飯食べさせながら、寝ているか、食べているかしかない父は虚しいだろうな、楽しいことひとつもないだろなと思って、「楽しい?」と聞く。「バカっ!」と応える父。ふたり笑う。
「色んなことあったね。戦争行ったり、山で木切ったり、寝ないで澱粉炊いたり、旅館やったり」「気がついたら八十年だ」「ねえ、あと何年かして死んだらさ、KかY(むすめたち)の子供に生まれといでよ。めんこがってめんこがって、絵本読んで、一緒に遊んで、うまいもの食べさせて育てるよ」「……」ふと覗き見ると眼窩に水溜まり。泣いている父だった。
夜、オシッコの介助で失敗。着替えさせて一二時間で全部濡らす。姉を呼び、二人で着替えさせる。「ふぅ。着せ替え人形完成!」と姉と二人して笑う。
これも一人でやっていたら、泣きたくなる場面だろうな。と思う。
本:井上荒野『ベッドの下のNADA』『日出処の天子二巻』平安寿子『しょうがない人』読み中。次はパッと明るい話しが読みたい。